5/23のページ  公用分例略記研究会

『訴の二』2校

 67ページから78ページ 

 2校の第4回校正にご協力いただき、ありがとうございました。

<皆さんからご指摘いただき、加除訂正を行う箇所> 

 (1)68ページ、後ろから6行目・5行目…行頭を一文字分下げます。

(2)68ページ、後ろから2行目…「…貯石…」の「石」の右側に「(穀)」を挿入します。
*「貯石」も「貯穀」と同じ意味で用いられたようですが、意味を明確にするために、「石」の右側に「(穀)」を挿入します。
【貯穀・貯石】(ちょこく)貯石は当て字。「たくわえこく」とも。貯夫食・囲穀(かこいこく)・囲籾(かこいもみ)とも。災害や凶作に備えた備荒貯蓄用の穀物。窮民・飢人救済のために貸し付けられるとともに、米価調整のためにも奨励された。(『古文書用語辞典』新人物往来社
(3)69ページ、6行目…「…不作相続…」の「相」を「打」に訂正します。

(4)71ページ、1行目…「…書附…」の「書」を「墨」に訂正します。
(5)71ページ、後ろから3行目…「天保十二年…」の「年」を削除します。
(6)72ページ、後ろから7行目…「半兵衛」を一文字分上げます。
(7)72ページ、後ろから2行目…「…絵荷」の「荷」を「符」に訂正します。
*【絵符】(えふ)人馬使用の特権を持つ武士や公家・門跡などが街道における荷物輸送のさい、優先的に取り扱いを受けるため、自分の荷物であることを明示した証札。
(8)73ページ、後ろから7行目…「…十二月」の「二」を「一」に訂正します。
(9)74ページ、5行目…「…年中御少略…」の「少」の右に「(省)」を挿入します。
*おそらくは「少略」は当て字として用いられてきたのだと思います。ただ、古文書用語辞典には、その旨記載されていません。当て字として一般的だったかどうかは不明です。念のため、意味を明確にするために「少」の右に「(省)」を挿入します。
*これに伴い、「4ページ、5行目」の「…少略…」も同様の措置を行います。
【省略】(しょうりゃく)はぶく。切りつめる。(『古文書用語辞典』新人物往来社
(10)74ページ、後ろから2行目…「…御少略…」の「少」の右に「(省)」を挿入します。
(11)74ページ、後ろから1行目…「至而…」の「而」を小さい上付き文字にします。
(12)74ページ、後ろから1行目…「纔ニ…」の「ニ」を小さい上付き文字にします。
(13)75ページ、5行目…「…矢張…」の「矢」を「失」に修正し、右に「(矢)」を挿入します。
(14)75ページ、7行目…「…御少略…」の「少」の右に「(省)」を挿入します。
(15)75ページ、後ろから7行目…「不取斗…」の「斗」の右に「(計)」を挿入します。
(16)75ページ、後ろから4行目…「心底…」の「底」を「庭」に修正し、右側に「(底)」を挿入します。
*文字修正は解読の誤りです。「心庭」は「心底」の当て字として用いられていましたが、意味を明確にするために、「庭」の右側に「(底)」を挿入します。
【心底・心庭・心躰(体)】(しんてい)心庭・心躰(体)は当て字。本心。気持ち。(『古文書用語辞典』新人物往来社
(17)75ページ、後ろから4行目…「…右体…」の「体」を「躰」に修正します。
(18)75ページ、後ろから2行目…「…拘り…」の「拘」を「抱」に訂正します。
*最後の「己」の部分が「ヒ」と中に入っているので、これまでの「抱」と違うような感じがします。ただ、これまで「拘」の字は使用されたことがありません。また、これまで出てきたくずし字を比較しても、同じようなくずし字があります。(下図参照)従って、「抱」に修正することにしました。

f:id:yodosan80:20200803145031j:plain(19)76ページ、1行目…「…且者…」の「者」を小さい上付き文字にします。
(20)76ページ、後ろから5行目…「…御少略…」の「少」の右に「(省)」を挿入します。
(21)77ページ、5行目…「…仕合存候…」の「合」と「存」の間に「奉」を挿入し、「…仕合奉存候…」とします。

 

<ご指摘いただきましたが、加除訂正が不必要と判断した事項等> 

(1)73ページ、後ろから4行目…「茶屋」の「茶」を「糸」に修正する。
*くずし字から「茶」と解読するのが適切だと思います。くずし字の下側が「ホ」でなく「小」に見えますが、くずし字の最初の筆入れの向きが、左から右斜め下になっています。「くさかんむり」の入り方です。「糸」は、最初の筆いれの向きが、右から左斜め下になっています。(下図参照)

f:id:yodosan80:20200803145122j:plain

(2)76ページ、1行目…「…聞へ旁ニ付」の「旁」は「芳」と読み「聞こえよきにつき」かなと思うが、どうだろうか。
*くずし字の形からは、「旁」です。(下図参照)記載者が「芳」と書き間違ったかを、意味から検討します。「旁ニ付」は、「いずれにしても」という意味です。何かを並べて比べる場合に使います。二つ以上の意味を表す文章なり、言葉が前半にあるはずです。「御開以来御嘉例之御儀」と「外々江之聞へ」が該当します。前後の文章の意味は、次のようになると思います。
 「御開以来御嘉例之御儀且者外々江之聞へ旁ニ付…」→「江戸に御屋敷をお造りになられて以来の代々のしきたりであること、そのうえ、外部への世間体(を考えると)、いずれにしても、(今迄通りの形式で実施した方が良いのではないでしょうか。)」
 従って、くずし字の形と意味の両面から考えて、そのままにしておくのが適切だと考えます。

f:id:yodosan80:20200803145231j:plain

(3)69ページ、5行目…「仮成」について、ハンドブックに「仮初(かりそめ)」の用法あるが、「仮成」の用法はなく、「可成」が多いとネットにある。「仮(可)」とすべきだろうか。
*『広辞苑』では、(かなり「可成・可也」)とあります。古文書用語辞典には下記のようにあります。「かなり」は様々な文字が使われていたようです。どの文字が当て字との指摘もなく、現代の人でも「仮成」とあっても意味が分かると思いますので、このまましておきたいと思います。
 【可成・ケ成・仮也・仮成・可也】(かなり)相当に。ひととおり。まずまず。(『古文書用語辞典』新人物往来社

 

 <当て字の右側への補足記載について>

 誤字以外(当て字)で、右側に( )という補足を付ける原則を、どうするか悩んでいます。他の解読文書を調べましたが、一般的な原則はないようです。「かなり」の例がありましたので、良い機会ですので、私が悩んでいることを記載しておきます。
 当て字について、現代の辞書に掲載されている文字を原則にして、他の言葉も見直しをすると膨大な手間がかかります。私は一応、古文書用語辞典に掲載されている場合は、そのまましておくということを原則にしています。ただ、現代の人々が意味がとりにくいだろうと思える場合は、右側に( )を付けて補足しています。そこが悩むところです。
<例>
*Aの例…古文書用語辞典に記載あり。けれども、現代の人に意味が分かるようにするためには( )を付けた方が良いだろうと判断した。
 ・相庭(場)(そうば)
 ・貯石(穀)(ちょこく)
 ・心庭(底)(しんてい)

*Bの例…古文書用語辞典に記載なし。
 ・取斗(計)…「取斗」(とりはからい・とりはからう)は、古文書用語辞典に記載なし。しかし、『公用分例略記』全体では、ほとんどが「取斗」が使用されている。「取計」の使用例がほとんどなし。他の古文書でも、「取斗」の使用例が多い。このような場合でも、すべて「取斗(計)」とするのが良いのだろうか。
 ・少(省)略…「少略」は、古文書用語辞典に記載なし。しかし、『公用分例略記』全体では、ほとんどが「少略」が使用されている。「省略」の使用例がほとんどなし。ただ、現代の人でも、「少略」と書かれてあっても、意味は分かる。このような場合でも、すべて「少(省)略」とするのが良いのだろうか。
 ・払庭(底)…「払庭」は、古文書用語辞典に記載なし。

 一社の辞典を基準にするのも、問題があるのですが、参考資料を拡大していくと、収拾がつかなくなります。*『古文書用語辞典』(新人物往来社刊)→最も内容が豊富で信頼できる辞典だと、滑川は思います。*
 あいまいな基準ですが、原則は「上記古文書用語辞典に記載されている場合は、右側に( )で補足を付けない」を基準にしていきたいと思います。そのうえで、「現代の人々にとり、意味が分かりにくい場合は、辞典記載の場合でも、右側に( )を付けて補足していきたい」と考えていきたいと思います。
 基準があいまいで、ぶれることがあると思いますが、ご了解ください。また変わるかも知れませんが、その節はよろしくお願いいたします。